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伝能因所持本(でんのういんしょじほん)、通称・能因本(のういんぼん)は、日本の随筆作品『枕草子』の写本の系統の一つ。 == 概要 == 大別して4種類が確認されている『枕草子』の写本系統の内、随想・類想・回想章段が混在した状態の雑纂本と呼ばれる系統の一つ。奥書に「能因が本」として、原作者・清少納言の実子・橘則長に姉妹が嫁いでおり姻戚関係を有する能因(橘永愷)が所蔵していた本と人づてに聞いた写本である旨が記されていることから、能因本と呼ばれる。なお、この奥書には「一品宮」、すなわち清少納言が仕えていた皇后定子の遺児・脩子内親王が善本を所蔵していたらしいとの伝聞も記されている。 同じ雑纂形態の三巻本よりも分量が多く、これを清少納言自身の推敲と見るか後世に第三者の手で加筆・改竄を施された結果と見るかで学説が分かれていたが、例えば「淑景舎」が三巻本では「しけいさ」、能因本では「しけいしや」と書かれていることなどから(唐音も参照)、現在では能因本の本文は作品の完成時期である平安時代中期よりも下った時代の文体とする見解が有力となっている。 また、三巻本との最大の相違点として跋文(あとがき)が挙げられる。能因本は三巻本の「この草子、目に見え、心に思ふことを」で始まるそれと多少の差異が見られる「物暗うなりて、文字も書かれずなりにたり」で始まる短跋と「わが心にもめでたくも思ふ事を、人に語り」で始まる長跋が有り、内容が重複していることから短跋に続けて長跋が書かれた訳ではなくそれぞれが別個の跋文として記載されている状態となっているが、このような措置が採られた理由は不明である。 三巻本の本文は奥書に「不散不審」と評されたように鎌倉時代前期には既に難解なものとされたことから、江戸時代には能因本系統の本文解釈が主流とされ加藤磐斎『清少納言枕草紙抄』・北村季吟『枕草子春曙抄』・岡西惟中『枕草紙旁註』などの注釈書が刊行された。但し、これらの注釈書が底本として用いている木活字本も能因本をベースとしながらも三巻本や類纂形態の堺本を参酌して本文を修正した箇所が有り、能因本の直系に立つものではないとする見解も在る。池田亀鑑が1928年(昭和3年)に論文「清少納言枕草子の異本に関する研究」を発表し、三巻本が再評価されて以降は能因本を底本とする注釈書は減っているが、後述のように現在も入手可能なものも存在する。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「能因本」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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