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能格性(のうかくせい、ergativity)という用語は、言語学において、二つの異なる性質を指す。 # 文法において、自動詞の主語と他動詞の目的語が同じように扱われ、他動詞の主語だけが別の扱いを受けるという性質のこと〔Dixon 1994: 6f.〕。このような性質を持っている言語を能格言語 (ergative language) と言う。 # 自動詞にも他動詞にも用いられる動詞について、自動詞用法の主語が、他動詞用法の目的語と同じであるという性質のこと〔Lyons 1968: 352.〕。このような動詞は能格動詞と呼ばれる。 (1)の意味で能格的であるということと、(2)の意味で能格的であるということの間には、何の関係も無い〔Dixon 1994: 18.〕。本項では、(1)の能格性を説明する。(2)の能格性については、「能格動詞」の項で説明されている。 自動詞の主語と他動詞の主語が同じように扱われ、他動詞の目的語だけが違う扱いを受ける場合もある。このような性質を対格性(たいかくせい、accusativity)と言う。対格性と能格性を兼ね備えている言語も多い〔。 ==概要== 日本語では、下の例のように、自動詞の主語にも他動詞の主語にも助詞「が」が付き、一方、他動詞の目的語には「を」が付く。このように、自動詞の主語と他動詞の主語が同じ標識(日本語なら「が」)で示される場合、その格を主格と呼び、他動詞の目的語の格(日本語なら「を」)を対格と呼ぶ。主格と対格を持つ格体系は主格・対格 (nominative-accusative) 型、略して対格型と言われる。 一方、オーストラリアクイーンズランド州の先住民語・では、自動詞の主語と他動詞の目的語には何も付かず、他動詞の主語にだけ ''ŋgu'' という標識が付く。このように、自動詞の主語と他動詞の目的語が同じように標示される(ジルバル語ならゼロで標示される)場合、その格を絶対格と呼び、他動詞の主語の格(ジルバル語なら ''ŋgu'' )を能格と呼ぶ。能格と絶対格を持つ格体系は絶対格・能格 (absolutive-ergative) 型、略して能格型と言われる。 それぞれの格体系をまとめると下表のようになる。 対格型や能格型の格体系は、文中の名詞や名詞句の標示の仕方に見られる対格性や能格性の例と言える。 形態論だけでなく、統語論(文の作り方)にも、対格的なものと能格的なものがある。たとえば、文を等位接続詞でつなぐ場合に同じ名詞句を省略すること(等位構造縮約)はさまざまな言語で可能である。英語もその一つだが、省略する名詞句は自動詞の主語または他動詞の主語でなければならない。下の例 (b) のように、他動詞の目的語は削除することができない。 一方、ジルバル語でも同一名詞句削除が可能だが、削除できるのは、自動詞の主語と他動詞の目的語だけで、他動詞の主語は不可能である。 形態的能格性を示す言語でも、統語論は対格的であることが多い。ジルバル語は主要な統語的操作(関係節・補文・等位接続)において自動詞の主語と他動詞の目的語を同じように扱う珍しい例である〔Dixon 1994: 13.〕。 主語に普遍的ないくつかの特徴をのぞいて考えると、形態論も統語論も完璧に対格的である言語は存在するが、逆に完璧な能格言語は見つかっていない〔Dixon 1994: 14.〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「能格性」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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