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自力救済(じりょくきゅうさい、、)は、民事法の概念で、何らかの権利を侵害された者が、司法手続によらず実力をもって権利回復をはたすことをいう。刑事法の自救行為(じきゅうこうい)、国際法の自助・復仇がこれに該当する。これを規定した条文はないが、現代の民事法では例外を除き禁止されている。マンションなど不動産の賃貸借において言及される例が多い。 == 概説 == たとえば、自転車が盗まれて犯人と自転車の所在が分かっているとき、この自転車を奪い返す行為は自力救済にあたり罰せられる。こうした自力救済を容認すると、力が正義ということになり、実力行使を請け負う私的機関がはびこって社会秩序の維持が難しくなるためである。近代化にともない、権利のあるなしの判断や執行は裁判所によってなされるべきとされ、私人の介入を排した。 司法制度が不十分な近代以前には、侵害された権利を回復するために実力に訴えざるをえなかった(たとえば、古ゲルマン法のフェーデ)。しかし自力救済は裁判所による煩雑な手続きよりも迅速に問題を解決させることができる側面も有している。そこで現代の法にあっては、例外規定を設けつつ自力救済を禁止する傾向が一般的である。その例外の広さはまちまちで、コモン・ロー系〔イギリス・アメリカなどの判例法重視の法体系。〕の民事法では自力救済の制限は緩やかで、国際法上は厳しく運用される。 日本法の歴史では、古代から自力救済が行われていたと考えられ、律令制において裁判制度が整備された後も一定の範疇で自力救済が行われていた(『雑令』では少額の債権に関する自力救済を認める規定もある)。更に律令法には判決に関する強制執行の規定がなく、国家権力に関する救済は十分でなかったと考えられている。中世に入ると、国家が社会の全ての集団や構成員を掌握している訳ではなく、その法を強制するだけの権力も無かった。そのため、紛争解決のために当事者に関わる血縁的・地縁的・職能的集団などの社会集団が武力を伴う実力行使によって権利の保全が行われる自力救済が社会的にも正当な行為とされた。勿論、武家法や公家法による裁判による解決方法もあったが、判決を執行させるのは最終的には判決と言う法的裏付けによって保証された実力行使であった。近世社会の成立以前において、自力救済は武士以外の階級にも広範に認められていたと考えられている〔むしろ、日本の戦国時代には戦乱による政府の権威低下と法そのものの不備により法的救済に対する信頼が失墜して、村落レベルから大名などの領主レベルまで実力行使による自力救済が法的救済に代わって行われていたとすら考えられている。〕が、戦国大名の分国法に多く見出される喧嘩両成敗法や裁判中の中間狼藉の禁止、故戦防戦法の導入、差押えに対する領主の許可制などはこのような私的刑罰権を制限していったと考えられている。もっとも、民間の自力救済には慣習法的な制約があり、在地裁判や中人(近隣からの仲裁)による話し合いによる解決策によって実力行使の回避が図られ、殺人犯などの引き渡しの作法や、自力救済を巡る合戦の際には一定のルールが定められるなど、実力行使による自力救済が限りない暴力と報復の連鎖を生みださない知恵も図られている。 豊臣政権及び続く江戸幕府は自力救済を抑制して公儀による裁判で解決させる方針を原則とした。武家法における仇討ちは自身の尊属および主人の敵を討つ場合にのみ認められ(公事方御定書により規定される)、仇討ちの際にはしかるべき届け出が必要とされた。また江戸時代の身分制社会では無礼討ち(幕末の生麦事件を参照)が存在し、1742年の公事方御定書においても成文として取り込まれている。これはむしろ近世以後に一般化し、18世紀以降不文律として定着していったようである。明治政府においては1868年の仮刑律では尊属を殺害した者に対する復讐は罰しないこととし、官に届け出さえすれば復讐は可能であった。しかし1873年には太政官布告により復讐は禁止させられ(この年の2月に「仇討禁止令」)、以後私的刑罰権は否定され、公刑主義が貫かれている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「自力救済」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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