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ポータブルストーブ(''Portable Stove'' )とは、特別に軽量コンパクトに製作された調理用ストーブ(焜炉)であり、主にキャンプやピクニック、登山や軍隊の行軍等において携行され、住居から遠く離れた場所での調理や暖房等の目的で使用される。時に野外病院(野戦病院)〔W. Keen, ed. "Surgery, Its Principles and Practice", p.122 (W.B. Saunders 1921)〕における湯沸かしや、野外でのケータリングサービス〔S. Shiring, et al., "Introduction to Catering: Ingredients for Success", p. 33 (Cengage Learning 2001)〕においても使用される重要な備品ともなる。 ポータブルストーブの歴史は古く、19世紀には既に幾つかの形式のものが発明されていた。その後様々な形状の物が開発されて現在に至っているが、基本的なデザインは19世紀末から20世紀初頭にはほぼ完成の域に達しており、現在に至るまで当時のデザインを踏襲して販売を続けているモデルも多い。ポータブルストーブは使用燃料により、固形燃料ストーブ、無加圧若しくは加圧式液体燃料ストーブ、ガスカートリッジ式ストーブ、スピリッツストーブなどに分類される。 == 歴史 == 東洋で中世以前から存在した薪などの木材を燃焼させる竈や薪ストーブ、炭などを燃焼させる七輪や火鉢等を除いては、歴史上初めて登場したポータブルストーブは1849年にフランスの:en:Alexis Soyerが発明した、Soyer's "Magic Stove"が初の事例とされる。Soyer's "Magic Stove"の構造は灯油ランプを元にした物で、灯油タンク内に浸された芯を伝って毛細管現象で燃料がバーナーに供給された〔A. Soyer, "The Modern Housewife Or Ménagère: Comprising Nearly One Thousand Receipts for the Economic and Judicious Preparation of Every Meal of the Day, and Those for the Nursery and Sick Room: with Minute Directions for Family Management in All Its Branches", pp. 451-52 (Simpkin, Marshall & Co. 1851)〕。 最初の加圧式ポータブルストーブはブロートーチをベースにしたケロシン(灯油)を燃料とするもので、1892年にスウェーデンのフラン・リンドクヴィストによって発明された。このストーブはプリムス・ストーブと名付けられ、極地探検や高山への登山にも耐えうる高い信頼性と強力な熱量を発揮する性能を持っていた。プリムス・ストーブは比較的構造が簡素であったことから、今日に至るまで幾多の会社から同様の機構を持つ無数のストーブが開発される母体ともなった。プリムス・ストーブ自体はその後数度に渡る販売会社やブランドの変遷を経て、本家としての系統は途絶えてしまっているが、現在でもほぼ同様の機構を持つストーブが各国で販売され続けている。日本企業による製品として今日も残るものとしては、吉川製作所のマナスルと武井バーナーが製造するパープル・ストーブが著名である。 その他の燃料を使用するポータブルストーブとしては、アルコールやホワイトガソリン、プロパンガスを使用する物が今日でも広く見られる。 アルコールを燃料とするアルコールストーブは極めて簡素な構造とその軽量さから、ハイキングや登山に用いられる。アルコールストーブの中でも著名な物はスウェーデンのトランギアの製品であり、1919年に登場した〔E. Morris, "The Rainy Day in Camp", in Outing Magazine p. 231 (July 1919)〕。なお、アルコールストーブは帆船等の木造船においては、安全性に配慮してアルコールではなく灯油を用いて使用される場合もあった。しかしこういった特別な安全性を重視する用途では、アルコールストーブは今日ではより安全性が高く高性能な交換カートリッジ式のガス式ストーブ(液化石油ガスやブタンが用いられる)に取って代わられている〔J. Smith, "Kitchen Afloat: Galley Management and Meal Preparation", pp.47-49 (Sheridan House 2002)〕 。 高性能な加圧式ポータブルストーブは軍事用途でもしばしば用いられた。兵士が戦場で携行する軍需品として最も有名な物は第二次世界大戦中にアメリカのコールマンが開発したGIポケットストーブ(GIストーブ)である。GIストーブは自動車用ガソリンで動作するように設計されていた。戦後になるとガソリンを燃料とするポータブルストーブやランタンは民間にも広く普及し、専用の燃料としてナフサを主成分とするホワイトガソリンが自動車用ガソリンに代わって広く使用されるようになった。キャンプ等に携行されるバックパッキングストーブとしての用途に特化したものとしては、前述のプリムス・ストーブから発展したスヴェア123が世界的に著名である。 今日の加圧式ポータブルストーブの中には気化器(ジェネレータ)を交換する事で、1台で複数の液体燃料に対応した製品も見受けられる。これらのマルチフューエルストーブは世界旅行の際に様々な国の燃料事情に対応できる物として重宝されている〔M. Mouland, "The Complete Idiot's Guide to Camping and Hiking", p. 324 (Alpha Books 1999)〕。 高性能で、且つ多種多様な燃料に対応できるポータブルストーブの開発は、ある側面では自然環境にも良い影響を与えた。バックパッカーと呼ばれる低予算で旅行を行なう旅人の間では、ヨーロッパでは1950年代に、アメリカでは1960年代頃からポータブルストーブを積極的に携帯して使用する機運が芽生えてきたとされる。それ以前のバックパッカーの自炊・暖房手段は多くの場合薪を集めての焚き火であり、バックパッカーが多く出入りする地域の地面には焚き火の跡が数多く残る光景が見られた。焚き火の跡は全く後処理を行わなかった場合、自然環境下でも完全に消え去るには数年を要するものであったため、旅行先でこうした破壊された景観が多く見られたこともバックパッカーの間でのポータブルストーブの普及を後押ししたと言われている。ポータブルストーブによる焚き火の減少は景観の保護のみならず、山火事の予防という意味でも非常に重要な役割を果たすものであった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ポータブルストーブ」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Portable stove 」があります。 スポンサード リンク
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