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親指シフト(おやゆびシフト)とは、日本語の「かな」を入力するため、1979年(昭和54年)に、富士通が考案したキー配列規格の一種である。ほぼ同時期に確立したQWERTYローマ字入力や、それ以前から存在したJISかな入力などと同様に、親指シフト規格は「かな漢字変換」のためのかな入力手段(日本語入力)として使用される。 NICOLA(ニコラ)は、日本語入力コンソーシアムが親指シフト規格のうち一部仕様を変更した規格である。 親指シフトキーボード(おやゆびシフトキーボード)は、親指シフト規格またはNICOLA規格に準拠するキーボードのことである。 == 概要 == 親指シフト規格は、日本語の文章を入力する上で『効率』と『使いやすさ』のバランスを再設計するために、いくつかの検討と実験を行ったうえで「一つのアクションが、一つのかなに対応する」方法にたどり着いた。 # 「自然な動作で入力できること」 # * 当初は一つの『音』を一気に入力しようと試み、両手全指の組み合わせを使って、10個のみのボタンを使って「同時打鍵」により入力するキーボードを実際に製作・評価打鍵し〔実験に使ったキーボードの写真 〕、『効率』よく入力することだけは可能であることを確認した。また、実際には同時押しをやりにくい組み合わせが多数あり、『使いやすさ』を実現するには同時押しを「親指+他の指」のみに絞って採用するほうが良い〔日本電子計算機 (JECC) ニュース、1980年8月1日のテキスト 〕〔日本電子計算機 (JECC) ニュース、1980年8月1日の画像 〕ことも、この実験を通じて確認した。組み合わせパターンが減るため『音』を入力するどころか、10個のキーでは『カナ』さえも入力できない。 # 「難しい知識が必要ないこと」 # * コンピュータ自体がまだ高価であった1970年代当時、コンピュータで日本語を入力するのはまだまだ少数のキーパンチャーに限られていた。数少ない高価な機材を効率よく使うためには、『習得難易度が高いかわりに、手書き速度比数倍以上で使える』方法が有利であるため、当時は漢字直接入力法(ペンタブレット法)などを含む、主にプロ向けの方法が多数考案されていた。しかし富士通は、時代が下ればワードプロセッサが1,000万台規模でオフィスに普及すると考えていた。富士通は当時からこうした時代を見据え、将来広く普及するワードプロセッサには『手書き速度比2倍程度の速度を、低い習得難易度で使える』方法が適していると結論付け、難しい知識なしに使いはじめることが出来る「かなキーボード+かな漢字変換」を採用した。 # 「入力効率が悪くないこと」 # * 富士通が目指したのは「英文タイプライタと同等の操作性で日本語入力を可能とすること」であった。先に発見した『親指との同時押し』は、英文タイプライタと同様のキーボードに組み込んで使えば、数字がある段を使わずとも「かな」を収められる。そのため、この方法でキーボード上に文字配列を詰め込んだ。ハードウェアの検討としては、TRONキーボードの登場よりも以前に「エルゴノミクス親指シフトキーボード」〔親指シフトキーボード - ykanda.jp 〕さえも製造したが、奇異なもの扱いされることを嫌って実際にはこれを採用せず、あくまでも英文タイプライタと同様の形状を尊重することとした経緯がある。 1980年を目前に控えた当時はまさに、入力法についてじっくり検討する時間などない『ワープロ専用機の、熾烈な開発競争』にさらされていたため、親指シフト規格については入力方式の設計・評価段階に大半を費やし、実際の文字配列に対して設計評価する時間はあまりなかった。それにもかかわらず、基本設計について検討・実験を重ねてきた親指シフト規格は、ワープロ専用機の普及初期において、商業的に確かな成功を収めた。また、こうしたハードウェア&配列に関する検討の成果は、後の日本語入力用キーボードに対して強烈な影響を与えつづけている。キーボード上で文字配列を本格的に設計評価する試みとしては、後に「多人数の運指時間を徹底測定する」ことによって入力速度の徹底追求を目指した、新JISかな (JIS X6004) が登場した。また、指の動作範囲を徹底的に研究して、その研究結果を元にエルゴノミクスキーボードを本格採用した、TRON配列も登場している。 21世紀以降では、JISキーボードのシェアが日本語入力用のハードウェアとして圧倒的であり、それに大きく差をつけられている。ただし、入力法の選択肢が「お抱え入力法」に限られていたワープロ専用機の時代は、既に過去のものである。 ハードウェア面で言えば、パソコンを利用する親指シフトユーザーには「親指シフト規格に向くJISキーボードで」親指シフト規格の配列を使うという選択肢があり、専門店の一部はそれを「親指シフト規格に向くJISキーボード」と紹介する例がある。またソフトウェア面では、JISキーボードでも親指シフト規格の配列を実現する「ソフトウェア」(特にフリーウェア)が多様な環境で動作するようになり、コンピュータからの見かけ上はJISキーボードとなっている「USB接続の、本物の親指シフトキーボード」の活躍の場が広がった経緯もある。 「ハードウェアシェアの低さ」とは対照的に「親指シフト規格が実現可能な環境のシェアは非常に高い」という状態が、パソコンの普及以来続いている。そのため、親指シフトキーボードというハードウェアのシェアから、親指シフト規格のシェアやユーザー数を推定することは、事実上不可能である。 パソコン用の親指シフトキーボードは富士通コンポーネントによって、2013年3月現在も供給され続けている。また、サードパーティ製のキーボードが発売されることもあった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「親指シフト」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Thumb-shift keyboard 」があります。 スポンサード リンク
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