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量子力学において角運動量の合成とは、別々の角運動量の固有状態から全角運動量の固有状態を作ることである。 例えば1つの粒子の場合、軌道角運動量とスピン角運動量との間にはスピン軌道相互作用とよばれる相互作用が存在し、完全な物理的描像はスピン-軌道の合成を含まなければならない。 また、ある決まった角運動量を持つ2つの荷電粒子の場合、クーロン力によって相互作用をし、2つの1粒子角運動量で全角運動量を合成することは2粒子シュレディンガー方程式を解くにあたって有効である。 どちらの場合でも、別々の角運動量はもはや保存量ではなく、2つの角運動量を合成したものが保存量となる。 原子における角運動量の合成は、原子スペクトルにおいて重要である。電子スピンの角運動量の合成は、量子化学において重要である。シェルモデルにおいても、角運動量の合成はいたるところで現れる。 ==一般論== 角運動量保存の法則は、系に外力が働かない場合は系の全角運動量は一定の大きさと方向を持つというというものである。角運動量は以下の2つの場合、保存量(時間に依存しない量)となる。 # 系は球対称なポテンシャル場を受ける。 # 系は等方空間を量子力学的に運動する。 どちらの場合でも角運動量演算子は系のハミルトニアンと交換する。不確定性原理より、これは角運動量とエネルギー(ハミルトニアンの固有値)が同時にある定まった値を持ちうることを意味する。 1. の例として、原子中の電子が核からのクーロン場しか受けないようなモデルを考える。一般に電子-電子間相互作用やその他の小さな相互作用(スピン-軌道相互作用など)を無視した場合、それぞれの電子の''軌道角運動量 '' lは全ハミルトニアンと交換する。このモデルでは、原子のハミルトニアンは電子の運動エネルギーと球対称な電子-核相互作用の合計だけで表せる。よってそれぞれの電子の角運動量l(1) はこのハミルトニアンと交換する。つまり、l(1) は原子をこのようなモデルで近似すると保存量になる。 2. の例として、自由場空間を運動する剛体回転子がある。剛体回転子はある決まった、時間に依存しない角運動量を持つ。 このような2つの場合は古典力学に由来している。3つめの保存する角運動量として、スピンと関連するような、古典力学では記述できないものがある。しかし、角運動量の合成はスピンにおいても適応できる。 一般に角運動量保存の法則は回転群(SO(3)やSU(2)で表現される)を示唆しており、球対称は角運動量の保存を示唆している。もし2つ以上の物理系が保存される角運動量を持つ場合、それらを合成して合成系の全角運動量、つまり全系の保存量を作ることが有効である。それぞれの系の角運動量の固有状態から保存する全角運動量の固有状態を構築することを''角運動量の合成''と呼ぶ。 角運動量の合成の適用は、相互作用がなく角運動量が保存するような系どうしの間に相互作用があるような場合に有用である。系間の相互作用によって系の球対称性は壊されるが、全系の角運動量は保存量のままである。このことはシュレディンガー方程式を解くにあたって有用となる。 例として、ヘリウム原子内の1,2という電子を考える。もし電子-電子間相互作用が無く、電子-核相互作用のみがある場合、2つの電子は互いに独立に核のまわりを回転し、エネルギーは変わらない。つまり、演算子l(1)もl(2)も保存する。しかし電子間距離''d'' (1, 2)に依存する電子-電子相互作用が生まれると、2つの電子の同時で等しい回転だけが''d'' (1, 2)についての不変量を残す。そのような場合l(1) も l(2)も一般的には保存量ではなく、L = l(1) + l(2)が保存量となる。与えられたl(1) と l(2)の固有状態について、L(保存量)の固有状態を構築することを''電子1と2の角運動量の合成''と言う。 量子力学において、1つの量子系を記述する異なるヒルベルト空間の角運動量でも合成することができる。例えば、スピンと軌道角運動量の合成などがある。 このことを少し言い方を変えると、それぞれの系を記述する量子状態のテンソル積から成る基底で、構成系(2つの水素原子や2つの電子のようなサブユニットからなるものなど)の量子状態を拡張したことになる。系の状態は、角運動量演算子(とその任意の''z'' 軸成分)の固有状態として選ばれていると仮定する。よって系は量子数''l'' , ''m'' の組によって正確に記述される(角運動量を参照)。系の間に相互作用がある場合、全ハミルトニアンは系のみに作用する角運動量演算子とは交換しない項を含んでいる。しかし、それらの項は全角運動量演算子とは交換する。ハミルトニアン内の交換しない相互作用の項は、角運動量の合成を必要とするため、''角運動量カップリング項''と呼ぶことがある。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「角運動量の合成」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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