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『豊饒の海』(ほうじょうのうみ)は、三島由紀夫の最後の長編小説。『浜松中納言物語』を典拠とした夢と転生の物語で〔「『豊饒の海』について」(毎日新聞夕刊 1969年2月26日号)。〕、『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の全4巻から成る。最後に三島が目指した「世界解釈の小説」「究極の小説」である〔〔「第十二回 究極の小説『豊饒の海』(一)」「第十三回 究極の始まり『豊饒の海』(二)」()〕。最終巻の入稿日に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺した(三島事件)。 第一巻は貴族の世界を舞台にした恋愛、第二巻は右翼的青年の行動、第三巻は唯識論を突き詰めようとする初老の男とタイ王室の官能的美女との係わり、第四巻は認識に憑かれた少年と老人の対立が描かれている。構成は、20歳で死ぬ若者が、次の巻の主人公に輪廻転生してゆくという流れとなり、仏教の唯識思想、神道の一霊四魂説、能の「シテ」「ワキ」、春夏秋冬などの東洋の伝統を踏まえた作品世界となっている。また様々な「仄めかし」が散見され、読み方によって多様な解釈可能な、謎に満ちた作品でもある〔佐藤秀明「〈作品解説〉豊饒の海」()〕。 〈豊饒の海〉とは、月の海の一つである「Mare Foecunditatis」(ラテン語名)の日本語訳で、〈月修寺〉のモデルとなった寺院は奈良市の「圓照寺」である。なお、最終巻の末尾と、三島の初刊行小説『花ざかりの森』の終り方との類似性がよく指摘されている〔「大団円『豊饒の海』」()〕〔井上隆史「豊饒の海」()〕。 == 発表経過 == 文芸雑誌『新潮』に、先ず1965年(昭和40年)9月号から1967年(昭和42年)1月号にかけて『春の雪』が連載され、同年2月号から1968年(昭和43年)8月号にかけては『奔馬』、同年9月号から1970年(昭和45年)4月号にかけては『暁の寺』、同年7月号から1971年(昭和46年)1月号にかけては『天人五衰』が連載された〔「作品目録」()〕。 単行本は、1969年(昭和44年)1月5日に『春の雪(豊饒の海・第一巻)』、同年2月25日に『奔馬(豊饒の海・第二巻)』、1970年(昭和45年)7月10日に『暁の寺(豊饒の海・第三巻)』、1971年(昭和46年)2月25日に『天人五衰(豊饒の海・第四巻)』が新潮社より刊行された〔「著書目録――目次」()〕。文庫版は各巻新潮文庫より刊行されている。翻訳版は、Michael Gallagher訳(英題:Spring Snow、Runaway Horses)、Cecilia Segawa Seigle、D.E. Saunders訳(英題:Temple of Dawn)、エドワード・G・サイデンステッカー訳(英題:The Decay of the Angel)をはじめ、世界各国で行われている〔久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」()〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「豊饒の海」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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