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『軍隊調理法』(ぐんたいちょうりほう)は、大日本帝国陸軍が昭和期に編纂・発行した料理の基礎と献立をまとめたレシピ集。本稿では明治期に編纂された、『軍隊調理法』の前身である『軍隊料理法』(ぐんたいりょうりほう)および、兵食(へいしょく)と称される「帝国陸軍の食事(「日本陸軍の食事」・「軍隊料理」)」自体についても詳述する。 なお、本書は主に兵営や駐屯地、後方において調理され食す兵食(給食)のレシピであり、乾パン・缶詰肉(大和煮など)・粉ミルク・乾燥食品・粉末調味料などといった演習地や戦地の前線で食される野戦糧食(戦用糧食・携帯口糧、レーション)については別に開発・供給されている〔「第一章 調理一般 第二 特殊調理」にて携行食や野外調理について触れられている。〕。 == 兵食 == 「地方(「娑婆」を意味する軍隊用語)」生活と異なり特に身体や頭を使う軍隊生活において、日々の食事は食欲のみならず娯楽の観点からも特に大事な要素であった。そのため帝国陸軍の兵食には戦前の日本人が特に慣れ親しんでいた和食のみならず、洋食・肉食を積極的に取り入れた数百種類のメニュー、おやつ(デザート)といった嗜好品、飽きさせない副食の設定がされていた。 当時の大日本帝国の一般庶民、特に大多数を占めた第一次産業従事者の生活水準は総じて低く、また昭和期においても多くは伝統的な日本の生活を営んでいたため、徴兵により軍隊に入営(入隊)するそれら庶民層の新兵にとって、カツレツ・コロッケ・ハンバーグ(挽肉油焼)・フーカデン・ロールキャベツ(玉菜巻)・ビーフステーキ・オムレツ(ヲムレツ)・カレー(カレー、ライス/ライスカレー)・シチュー(スチウ/シチウ)・ドーナツ・フレンチトースト(焼パン牛乳かけ)といった「地方」生活と異なる帝国陸軍の豪華な食事・洋食は、兵舎のベッド(寝台)や本格的な洋服(軍服)と共に新鮮なものであった。 一例として、のちに「兵隊作家」となる棟田博は、昭和恐慌当時の1929年(昭和4年)1月から1930年(昭和5年)11月にかけて現役兵として在隊していた岡山歩兵第10連隊の兵食事情について、以下の如く懐古している。 * 「あの時代の一般家庭の食事にくらべると、たしかに当時の軍隊の食事は上等であり、ご馳走の名にふさわしいものだったと思う」〔棟田博 「陸軍いちぜんめし物語 兵隊めしアラカルト」 光人社、2010年(新装版)、p.20〕 * 「''こういう時代背景を思いあわせると、軍隊の兵食は、眉に唾をつけて聞きたくなるほどのゼイタクであったといえる''」〔棟田 p.20〕 * 「''ぼくは、じかに聞いたわけではないが、Aは同年兵の仲良しに洩らしていたそうである。こんなうまいもの(たぶん、トンカツとかコロッケであったろう)は、うちの者は口にすることがない。わしだけこうして食べるのが辛い、と''」(同じ内務班の初年兵Aについて)〔棟田 p.21〕 カレーや肉じゃがなど、今日ではおふくろの味として親しまれている料理もこの本によって普及が促進されたとされている。カレーにしろ肉じゃがにしろ海軍の方が早くから導入していたが、兵員数・部隊数・各衛戍地などを鑑みた場合陸軍の方が圧倒的に組織力で勝り大規模であったため、情報量の少なかった戦前において日本全国津々浦々への国民食の普及という観点からすると本書の影響は大なるものであった(後述)。なお、『軍隊調理法』および兵食について作家の山本七平は「おふくろの味という言葉があるが、当時の軍隊食は、まさに日本的平均おふくろの味であった」〔棟田 p.22〕と、伊藤桂一は「元兵隊だった人たちは、この本の料理を通じて、当時を郷愁し、話題をゆたかにされるだろう」〔棟田 p.22〕との言葉を残している。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「軍隊調理法」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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