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『近代能楽集』(きんだいのうがくしゅう)は、三島由紀夫の戯曲集。能の謡曲を近代劇に翻案したもので、国内のみならず海外でも舞台芸術として好評な作品群である〔佐伯順子「『近代能楽集』」()〕。自由に時間と空間を超える能楽の特質を生かし、独自の前衛的世界を醸し出しているこれらの作品群は、写実的な近代演劇では描ききれない形而上学的な主題や、純化した人間の情念を象徴的に表現している〔「あとがき」(『近代能楽集』新潮社、1956年4月)。〕〔「舞台の多彩な魅力――『鹿鳴館』の成功」()〕〔。 1956年(昭和31年)4月30日に新潮社より刊行されたものには、「邯鄲(かんたん)」「綾の鼓(あやのつづみ)」「卒塔婆小町(そとばこまち)」「葵上(あおいのうえ)」「班女(はんじょ)」の5曲が収録され、1968年(昭和43年)3月25日刊行の新潮文庫版には、「道成寺(どうじょうじ)」「熊野(ゆや)」「弱法師(よろぼし)」の3曲を加えた全8曲が収録された。翻訳版はドナルド・キーン訳(英題:Five Modern Noh Plays)をはじめ、世界各国で行われている〔久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」()〕。 「源氏供養(げんじくよう)」という9作目も発表されたが、三島が自分の意思で廃曲とした〔三好行雄との対談「三島文学の背景」(国文学 解釈と教材の研究 臨時増刊号・三島由紀夫のすべて 1970年5月25日号)。〕〔原田香織「源氏供養」()〕。 == 作品成立・概要 == 三島由紀夫は少年時代から歌舞伎や能楽に親しんでいたが、近代能の創作動機については、明治・大正期の劇作家・郡虎彦が能の『鉄輪(かなわ)』『道成寺』『清姫』を原作そのままの時代の筋と、ホフマンスタール風なアレンジで近代的一幕物にしていたことからヒントを得たとし〔、自身の翻案意図との違いについては以下のように説明している。 能は舞台装置がほとんどなく、いわば「無の空間」で、何の制限も無しにドラマが展開されるが、三島はその感覚を取り入れ、一般的な近代劇とは異質な独自の新しい演劇世界を設定した〔。 なお、番外編として、1957年(昭和32年)に企画されたニューヨーク上演用に、『卒塔婆小町』『葵上』『班女』の3曲を繋ぐ場面を新たに創作し、構成・加筆して統一的な芝居にした『Long After Love』(邦題:恋を求めて幾年月)という3幕物の戯曲もある。タイトルは、〈恋のずっと後〉と〈恋を慕う〉という二つの意味を兼ねてつけられ、前者の意味は『卒塔婆小町』にあり、後者の意味は『葵上』と『班女』にある〔ドナルド・キーン「三島由紀夫の埋もれた戯曲」(中央公論 1971年4月号)。〕。また、『葵上』と『卒塔婆小町』の間にはさむものとして、狂言『附子』をアレンジした『附子(ぶす)』もある。この2曲は1957年(昭和32年)10月に創作された〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「近代能楽集」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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