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『隅田川花御所染』(すみだがわはなのごしょぞめ)とは、歌舞伎の演目のひとつ。文化11年(1814年)3月、江戸市村座にて初演。鶴屋南北作。隅田川物と清玄桜姫物の世界に、さらに鏡山物を綯い交ぜにしたもの。通称『女清玄』(おんなせいげん)。 == あらすじ == === 一番目三建目 === (発端 鎌倉六本杉の場)京の公家吉田家の子息松若丸は天下を覆そうとの望みを抱き、吉田家を出奔していたが、それが天狗に連れられあちこちの山を巡った後、鶴岡八幡の境内にある六本杉の高い枝に引っかかっていた。そこに異様の姿で丑の刻参りをする一人の男。これは入間家の家老粂の平内左衛門、その正体は平家の残党後藤兵衛盛長で、鎌倉幕府を呪っていたのであった。平内左衛門は松若丸に、吉田家は当主の少将惟貞が死んでお取り潰しになり、それが北条氏による讒言のせいだと聞かせる。松若丸はまずは幕府を潰してくれると平内と結託する事になり、そこに来合わせた大友常陸之助頼国とその家来の東馬を殺し、頼国に成りすまそうとはかる。 (浅草新清水花見の場)松若丸が婿入りするはずだった入間家では、当の松若が行方不明となり、吉田家も退転してしまったことにより婚儀が流れてしまった。結婚相手であった入間家の息女花子の前は、松若がすでにこの世には無いものと思い、出家を遂げる決心をする。そして入間の家は花子の前の妹である桜姫に婿を取らせて相続させることになった。今日は妹の桜姫をはじめ入間家の奥に仕える局の岩藤、中老の尾上や腰元など大勢の供も連れ、浅草新清水の寺に参詣しに来ているが、花子は参詣ののち出家剃髪するつもりである。 だが岩藤は、兄の平内左衛門とともに入間家を乗っ取ろうとしていた。そこでその計略のひとつとして、出家した花子の前をわざと堕落させようと企んでいたのである。それは履くと男に心を乱すという秘術を仕掛けた草履を花子に履かせるつもりで、その草履を猿島惣太という男に誂えさせていた。 深編笠をかぶり供を連れた二人の侍が寺を訪れる。一方は桜姫に岡惚れしている清水平馬之助清玄(しみずへいまのすけきよはる)、もう一方は大友常陸之助頼国。じつは桜姫が婿取りをするというのはこの常陸之助であったが、その正体は常陸之助になりすました松若丸である。平馬之助は桜姫に付け文を渡そうとするが、桜姫は相手にせず、それよりもいいなづけの常陸之助頼国の美男子ぶりにうっとりとする。 (竹刀打ちの場)参詣を済ませた花子の前は、供の者たちとともに寺の客殿で休息している。出家に当り戒を受ける阿闍梨から袈裟や衣を贈られた花子は、吉田家より送られた都鳥の一巻を、吉田家の菩提寺に納めるよう尾上に渡した。だが岩藤はそれが気に入らず、奥向きでは尾上より上役であるはずの自分にまず預けるべきだと言い、さらに尾上の素性が町人であることをあてこすり、それでお主を守るための武芸のひとつでも心得ているか、なければ禄盗人、知行盗人と散々に悪口し、自分と武芸で立合えという。 そこへ、尾上の下女お初が「お待ちくださりましょう」と現われる。お初は尾上の忘れ物を届けに来たのだったが、あるじの尾上の困惑しているのを見かねて出てきたのだった。お初は自分が尾上の代わりとして立合うことを岩藤に願い出たので、岩藤はこれを許し、室内に掛かっていた絵馬から取った竹刀で勝負をすることになった。まずは岩藤つきの腰元たちと勝負すると、腰元たちは散々に打ち据えられ、次に岩藤が直接相手をするも、これも打ち据える。この場を見ていた尾上は出すぎたこととお初を扇で打って叱るが、内心は悦んでいる。お初はその場を立ち退いた。やがて、花子の前がいよいよ剃髪することになったが、そこには阿闍梨から贈られた金剛草履と称し、例の岩藤たちのたくらみによる草履が置かれていた。 (元の新清水の場)いっぽう妹の桜姫は、腰元たちなどの手引きにより常陸之助(じつは松若)との逢引を楽しもうとしていた。そこへ出家剃髪し、姿を袈裟衣に数珠と改めた花子の前、その名も改め清玄尼(せいげんに)が通りかかる。その足には例の岩藤たちが用意した草履を履いていた。清玄尼は、桜姫と一緒にいる常陸之助の顔を見て驚く。自分が持っている松若丸の絵姿によく似ている…そう思いつつもその場を通り過ぎたが… (夢の場)清玄尼が草庵で経を読誦していると、そこに一人の男が尋ねてくる。それは清玄尼が所持していた松若丸の絵像と比べると瓜二つ、松若その人であった。はじめて松若の顔を見た清玄尼は、こうしてお目にかかったうえはもう尼になることは嫌と言い、松若もそれがよかろうという。そのあと清玄は松若と、出家の身ながら堕落してしまうことに… (新清水の場)…というのは、清玄の見た夢であった。 清玄は迷いの心を払わんと経文を読誦していたが、いつのまにか眠ってしまったものらしい。それがいとしいと思う松若を相手に破戒堕落する夢を見たことを清玄は恥じ、「とても生きてはいられぬ」と、清水の高い舞台から傘を持って飛び降りてしまう。 だが、清玄は飛び降りたものの気絶しただけで死ねなかった。そこへ居合わせた常陸之助が清玄を介抱する。清玄は気が付く。常陸之助と桜姫はその場で祝言の盃を交わすことになったが、その酒には鴛鴦の生血が用いられていた。そこへ平馬之助が来て恋敵の常陸之助に言いがかりをつけるが、それを庇うために清玄が生血の酒を飲んでしまう。生き物の血肉を口にするのは、僧侶として殺生戒に触れることである。清玄は破戒した咎で寺を追われることになったが、常陸之助を見てついに耐え切れず、松若様と呼んでかき口説く。常陸之助じつは松若は人違いと否定するも、なおもすがりつく清玄をもてあまし、ついには突き放し立ち去る。突き放された拍子に清玄は境内にある滝壺に落ちた。ようよう滝壺から這い上がった清玄は、来合わせた惣太にからまれながらも「胴欲なは松若さま、恨めしいは桜姫」と、常陸之助のあとを追ってゆくのだった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「隅田川花御所染」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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