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隈取 : ウィキペディア日本語版
隈取[くまどり]

隈取(くまどり)とは、歌舞伎独特の化粧法のことである。初代市川團十郎が、坂田金時 の息子である英雄坂田金平役の初舞台で紅と墨を用いて化粧したことが始まりと言われる。中国古典劇の京劇にも臉譜(れんぷ)と呼ばれる独特の隈取があり、両者には色彩によって個性を強調するなど共通点が多い。

== 隈取の意味 ==
隈取は初代團十郎が人形浄瑠璃の人形のかしらにヒントを得て創作したものといわれ、顔の血管や筋肉を誇張するために描かれたもので、役柄により、施される隈取や色が異なる。
最も荒々しい紅色の太くはっきりした「筋隈」やそれよりは大人しいが力強い「一本隈」は、共に若く正義感にあふれた英雄に用い、一つの劇で場面によって使い分けることもある。『菅原伝授手習鑑』の梅王丸やの主人公が有名。
同じ紅色系統でも水も滴るような美男子には下瞼に沿って紅を塗る「むきみ」を用いる。『助六』などの曾我五郎時致が有名。
黒・藍色系統では、「公家荒」と呼ばれる国家転覆を狙う大悪人(『菅原伝授手習鑑』の藤原時平)の隈や、嫉妬の鬼と化した女性の「般若隈」(『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子、その本性は清姫)、女妖怪に使う「鬼女隈」(『紅葉狩』の鬼女紅葉や『戻橋』の女に化けた鬼など)、荒れ狂う悪霊の怨念を表した「亡霊隈」(『船弁慶』の平知盛)など猛々しさは紅色の隈取に匹敵するが、冷酷であったり妖力を使う悪役のものである。
代赫色(茶色)は土蜘蛛など、老獪で非情な役に用いられるが種類は少ない。
以上のように大体の型はあるものの、隈取は役者が自分で書き入れるものなので一人一人形が違う。歌舞伎の贔屓の中には、楽屋に絹本を持ち込んで役者に隈取を写し取ってもらったものを蒐集する者もいる。
歌舞伎の「隈取」は人間の顔かたちを想定したものなので基本的には人間にしか用いない(『義経千本桜』に登場する源九郎狐の「火炎隈」などもあるが動物の隈取というより神秘的な力を現す隈取)が、京劇の「瞼譜」は有名な孫悟空の隈取をはじめ動物役を想定した隈取が何種類も存在する。
瞼譜を含め、アジアの舞台化粧は赤や黒のほかにも緑や黄色などが加わり、表情を強調するものというより異常性を際立たせることに主眼が置かれ、そのルーツである仮面劇の仮面のような役割を果たす。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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