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階差機関(かいさきかん、''difference engine'')または差分機関(さぶんきかん)は、歴史上の機械式用途固定計算機で、多項式の数表を作成するよう設計された。対数も三角関数も多項式で近似できるため、そのようなマシンはかなりの汎用性があった。 == 歴史 == ヘッセンの軍人で技術者のJ・H・ミュラー (J. H. Müller) は1786年に出版した本の中で階差機関に類する機械のアイデアを公表しているが、資金が集められず、それ以上実現に向けて進めることができなかった。 階差機関は一旦は忘れられ、1822年にチャールズ・バベッジによって再発見(再発明)された。彼は6月14日、王立天文学会に「天文暦と数表の計算への機械の適用に関する覚え書き」と題する論文を提出した。この機械が階差機関一号機である。十進方式で、人の手でクランクを回すことで動作する。1830年の設計では、16桁で6階の階差を計算するものであった。1832年に、エンジニアJoseph Clementとのいきちがいから計画の進行は頓挫した。英国政府は当初この計画に資金を提供したが、後に予算を大幅にオーバーし、最終的に1842年に資金的なサポートが断たれている。開発に当たっては、当時の金額で17,000ポンド(さらにバベッジの自己資金がほぼ同額)がつぎ込まれた。右図が階差機関一号機である。バベッジはより汎用的な解析機関の設計に興味を移したが、1847年から1849年にかけて改良した階差機関二号機を設計した(第一階差エンジン・第二階差エンジン、としている文献(新戸『バベッジのコンピュータ』)もあるが、番号付けが「階差」にかかるようにも読めてまぎらわしいので、この記事では「一号機」「二号機」とする。基本設計を大幅に拡大したものであり、同型機の1台目と2台目という意味ではない)。 バベッジの階差機関計画に刺激されたスウェーデンの実業家ペール・シュウツは1843年ごろからスウェーデン政府の援助を受けて階差機関の製作を開始し、1853年には実用機が完成した。シュウツの階差機関はイギリスやアメリカにもわずかながら売れている。しかし、バベッジの本来の設計よりも階数を少なくしたため用途が限られ、想定よりも売れず、シュウツは破産している。マルティン・ヴィーベリもスウェーデンでさらに改良した階差機関を製作したが、彼はそれを使って対数表を作ることしか興味がなかった。しかし、そのころには歯車式計算機を使うことで一般の数表も間違いが少なくなってきていたため、彼の商売も行き詰った。 バベッジの本来の計画に基づいて、ロンドンのサイエンス・ミュージアムは実動する階差機関二号機を1989年から1991年にかけて製作した。バベッジ生誕200周年の記念事業の一環である。2000年には、バベッジが設計した数表出力用プリンターも完成している。もともとの設計図を製造に適した図面に書き写す段階でバベッジの設計にいくつかの細かいミスが見つかったため、それらは訂正する必要があった。完成した階差機関とプリンターはどちらも問題なく動作した。階差機関とプリンターは19世紀の技術水準の信頼性や精度に合わせて製作され、バベッジの設計したものは動くのかという長年の議論に終止符を打った。バベッジの階差機関の開発が失敗した理由としては、当時の工作技術力が不足しているという説もあった。しかし、シュウツ親子による階差機関が完成していることもあり、工作技術力というよりは、実際の開発作業を行なった技術者クレメントとの間での確執、すなわち必要とする費用の問題であったという説もある。今日の視点からは、バベッジが当時要求した精度が過剰なものであったという指摘もあるが、そもそも公差という概念ができる前の時代であることを考えると、工作精度といったことより、このような複雑な機械の製作を管理する工学的手法がまだ無かったと言える。 なお、ここでは便宜的に「プリンター」と呼んでいるが、実際には印刷用の原版を作る機械である。バベッジの意図としては、数表を出版する際に間違いやすい人手による植字という工程を経ずに大量に印刷したいという考えがあった。そのプリンターが紙にも結果を出力するようになっていたのは、階差機関の性能をチェックする手段という意味があった。 サイエンス・ミュージアムでの製作に加え、Nathan Myhrvold の依頼で階差機関二号機の2台めの製作が行われ、2008年5月から2010年末までマウンテンビューのコンピュータ歴史博物館に展示された。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「階差機関」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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