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雪氷圏(せっぴょうけん、ギリシア語で「寒冷」、「凍結」、「氷」を意味する(''kryos'')と「球」を意味する(''sphaira'')から英語の''cryosphere''ができた〔σφαῖρα , Henry George Liddell, Robert Scott, ''A Greek-English Lexicon'', on Perseus〕)は、海氷、湖氷、河川氷、積雪、氷河、氷冠、氷床、そして(永久凍土を含む)凍土を含めた、水が固体になっている地球表面の部分のことをいう。したがって、水圏と内容が幅広く重複する。雪氷圏は、表面エネルギーや水分の流動、雲、降水、水文学、大気循環、大洋循環への影響を通じて生じる重要なつながりとフィードバックをもった地球の気候体系になくてはならない部分である。こうしたフィードバックの過程を通して、雪氷圏は地球の気候やそれに応じた気候モデルにおいて重要な役割を果たす。 == 構造 == 凍結氷は主に積雪、湖や河川の淡水氷、海氷、氷河、氷床、凍土、そして永久凍土(常に凍結した地表)として地球の表面に存在する。これらの氷雪地域の個々のサブシステム中における水の滞留時間は大きく異なる。基本的に積雪や淡水氷は季節的なものであり、北極中央部にある氷をのぞいた海氷の大部分は季節的でないとわずか数年しかもたない。ところが、氷河や氷床、地中氷の内部にある所定の水分子は1~10万年あるいはそれ以上の長い間凍ったままのこともあり、東南極の深部に位置する氷は凍ってから100万年に達するものもある。 世界中の氷の体積の大部分は南極大陸、とりわけ東南極氷床が占める。しかし面積範囲に関していえば、北半球の冬季の雪と氷の占める広さは最大であり、1月では平均して半球の表面全体の23%を占める。その広い面積範囲と、雪と氷それぞれの固有の物理的特性と関連した重要な季節的役割は、雪や氷の覆う広さや厚さ、物理的特性(光や熱に関する特性)を観察しモデル化することが気候学の調査において特に重要だということのしるしである。 地表と大気の間のエネルギー交換を調節する、雪と氷の根本的な物理的性質がいくつかある。最も大切な性質には表面での反射率(反射能)、熱を移す能力(熱の拡散率)、状態変化を起こす能力(潜熱)がある。こうした物理的性質は、表面の粗さや放射率、誘電体の性質と合わせて、雪や氷を宇宙から観察するうえで重要性を帯びている。例えば、表面の粗さはしばしばレーダー後方散乱の強さを決定づける主要な要素である〔Hall, D. K., 1996: Remote sensing applications to hydrology: imaging radar. Hydrological Sciences, 41, 609-624.〕。また、結晶構造や密度、長さ、液体の含水量といった物理的性質は、熱と水の移動やマイクロ波エネルギーの拡散に影響を与える重要な要素である。 入射する太陽光に対する表面反射率は表面のエネルギー収支にとって重要である。これは入射する太陽光に対する反射光の割合で、通常は反射能と呼ばれる。気候学者は、電磁スペクトルのうち太陽エネルギー入射量の主要部分と一致する波長範囲(300~3500 nm)について積分した反射能に、主として興味を持っている。一般に融解していない雪に覆われた表面の反射能の値は、森の場合を除くと高い(80~90%まで)。雪と氷のより高い反射能は高緯度地域での春と秋の表面反射率に急激な変化を引き起こすが、この増加に関する全般的な気候の有意性は空間的かつ時間的に雲量によって調節される。(地球の反射能は主として雲量と冬の月間に高緯度地域が受けるわずかな日射量の合計によって決まる。)夏と秋の季節は北極海が曇天である割合が高い時期であるため、海氷の面積範囲の大きな季節的変化と関連している反射能フィードバックは非常に減少する。グロイスマンら(1994a)は、積雪地域に入射する太陽光が最大の春季(4月~5月)に積雪が地球の放射照度に大きな影響を与えることを観察した〔Groisman, P. Ya, T. R. Karl, and R. W. Knight, 1994a: Observed impact of snow cover on the heat balance and the rise of continental spring temperatures. Science, 363, 198-200.〕。 雪氷圏の構成要素の熱の特性はまた重要な気候的意義をもつ。雪と氷の熱拡散率は空気のそれよりも非常に小さい。熱拡散率とは温度波が物質を透過することのできる速度の指標である。雪と氷は空気よりも熱の拡散が何桁も値が異なるほど効率的でないのである。よって、積雪は地表を、海氷はその下にある海洋を覆って、熱や水分の流動に関する表面と大気の境界面を分断する。水面からの水分の流動は厚さの薄い氷によってでさえ断ち切られてしまう一方で、薄い氷を介した熱の流動は存在し、この現象は氷が30~40cmを超えるほどの厚さになるまで続く。しかしながら、氷の上部に少量の雪があると、それだけで驚くべきほど熱の流動が抑えられ氷の成長速度が遅くなる。この雪の遮断効果はまた、水循環と重要なつながりがある。ゆえに、永久凍土のない地域では雪の遮断効果が非常に大きいので、本当に地表に近い地面のみが凍結して深水域の排水は妨げられない〔Lynch-Stieglitz, M., 1994: The development and validation of a simple snow model for the GISS GCM. J. Climate, 7, 1842-1855.〕。 雪と氷は冬に大量のエネルギー損失から地表を遮るように作用するが、氷が融けるのに必要なエネルギー量が大きい(融解の潜熱は0 °Cで3.34 x 105 J/kg)ため、春や夏には、地表が温まるのを遅くする作用がある。しかし、広範囲に雪や氷が存在する地域における大気の強い静安定性は即時の冷却効果を比較的浅い層に限っており、関連のある大気の偏差は通常短期的で規模としては小さめである〔Cohen, J., and D. Rind, 1991: The effect of snow cover on the climate. J. Climate, 4, 689-706.〕。ところがユーラシア大陸など世界中の地域によっては、大量の積雪と水分を含んだ春の土壌に関連した冷却は、夏の季節風循環を調節する役割を担っていることで知られている〔Vernekar, A. D., J. Zhou, and J. Shukla, 1995: The effect of Eurasian snow cover on the Indian monsoon. J. Climate, 8, 248-266.〕。ガッツラーとプレストン(1997)はここ最近、アメリカ合衆国南西部における、これに類似した雪による夏の循環フィードバックの証拠を示した〔Gutzler, D. S., and J. W. Preston, 1997: Evidence for a relationship between spring snow cover in North America and summer rainfall in New Mexico. Geophys. Res. Lett., 24, 2207-2210.〕。 積雪による季節風の調節という役割は、地表面と大気に関する氷雪気候の短期のフィードバックの一例に過ぎない。図1から地球の気候体系には数多くの氷雪気候のフィードバックが存在することがわかるだろう。これらは局所的季節的な気温の低下から半球規模で何千年もの期間にわたって起こる氷床の変動まで空間的にも時間的にも幅広く作用する。これに関連するフィードバック機構はしばしば複雑で完全にわかりきっていないことがある。例えばいわゆる「単純な」海氷の反射能フィードバックは、氷の拡大により生じた水路の断片や解氷により生じた池、氷の厚さ、積雪、海氷の面積範囲が複雑に絡み合っていることがカリーら(1995)によって示された。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「雪氷圏」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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