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鞭毛虫(べんもうちゅう)とは、原生動物の中で鞭毛で運動する生物を総称する呼び方である。以前は分類群の名称として用いられた事もあったが、21世紀初頭現在では専ら「鞭毛を持つ原生生物」の意味で用いられ、自然分類群としての要素は無い。 == 提唱と解体の経緯 == 現在でこそ「鞭毛虫類」は人為分類群である事が一般に認知されているが、古くは二界説における原生動物門や、三界説や五界説で言う原生生物界の中に設置され、自然分類群であるかのように扱われてきた。鞭毛虫類は「鞭毛で運動する単細胞生物」である事を分類形質とし、該当する生物全てをまとめた群であった。従って、単細胞又は群体を形成する生物で、一本以上の鞭毛を備えるものは悉く鞭毛虫類に含まれた。鞭毛虫類の内部分類としては、葉緑体を持つ有色鞭毛虫(=植物性鞭毛虫、藻鞭毛虫、鞭毛藻)類と、持たない無色鞭毛虫(=動物性鞭毛虫)類とに区分された。分子系統分類という手法が存在しなかった当時、分類形質たり得る形態情報が著しく限定される単細胞生物にあって、鞭毛や色素体という明瞭な細胞構造は格好の分類基準であった。 一方アメーバ様の生物に対しては、鞭毛虫類と対比させる形で根足虫類という群が設立され、仮足を持つもの、変形運動を行うものはここに集められた。しかしながら、アメーバ様の特徴を備えながらも鞭毛を持つ生物も多く存在し、それらは「有鞭根足虫類」などと呼ばれたり、或いは鞭毛虫と根足虫をまとめて「肉質鞭毛虫類」なる分類群が設けられるなどした為、鞭毛虫類を取り巻く分類体系は混乱を極めた。 また、有色鞭毛虫類は鞭毛虫類であると同時に藻類として扱われ、そこではむしろ色素体に含まれる同化色素が重要な特徴とされる。その部分の特徴が異なるものが複数含まれるため、動物としては鞭毛虫綱の下の目の異なるものとの扱いであるのに、それらが植物としては異なった門に入ることが珍しくなかった。 原生生物の研究が進むにつれ、鞭毛は真核生物の先祖的形質である事が明らかとなってきた。繊毛もまた、鞭毛と根本的に異なるものとは見なされなくなった。そして単に鞭毛の有無ではなく、鞭毛の根元にある鞭毛装置や、鞭毛に付随する修飾構造こそが系統を反映するものであるという認識が広まった。その経過の中で、鞭毛虫をまとめて一つの分類群とする扱いは衰退した。 また、原生生物の分類に大きな変革をもたらした概念として細胞内共生説が挙げられる。この説の提唱とその検証に伴う細胞内共生関係に関する知見の蓄積により、有色鞭毛藻類と無色鞭毛虫類とは単純に隔たった分類群ではなく、複数回に渡る葉緑体の獲得と欠失とを十分考慮して互いに位置付けるべきものであるとの考えが浸透した。例えば、光合成を行う独立栄養生物であるミドリムシ類と、寄生性の病原虫であるトリパノソーマ類とは非常に近縁であるが、前者のみが葉緑体を獲得したがゆえに異なった外見と生活様式をとるようになったのである。一方、葉緑体を持つ種を含む渦鞭毛藻と、寄生性のマラリア原虫も同じアルベオラータに属していながら異なる生活様式を見せるが、この場合は後者が二次的に光合成能を失っている(Lang-Unnasch et al. 1998 参照)。このような例は他の分類群でも枚挙されるものであり、表面的な有色無色の区別は系統的に無意味である事を知らしめた。 現在では、かつて有色鞭毛虫類とされた目の多くが、それぞれ独立した門として扱いを受けている。無色鞭毛虫類についても、同様にそれぞれの群が独立したものと見なされる傾向がある。しかし、前者が古くから色素の種類などを基礎にある程度確立した分類体系を持っていたのに比べ、後者では分類の上で重要な形態形質について十分に把握されていなかった。その為、近年では電子顕微鏡レベルの微細構造観察と、1980年代以降急激に発展した分子系統解析の結果を受けて分類群編成の大局が変化しており、しかも多くの説があって研究者の間でも未だにコンセンサスがとられていない。その上、近年は和語で分類群の名を付ける努力が怠られる傾向があり、それぞれの分類群に対応する馴染みやすい名前がほとんど無い。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「鞭毛虫」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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