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列車便所(れっしゃべんじょ)は、鉄道車両の車内に設置される便所を指す用語である。 短距離向けの通勤用車両の一部を除いて、日本の旅客用鉄道車両の多くは車内に乗客用の便所を設置している。それらは車両内の限られた空間に設置される必要性から、通常の建築物に設置される便所とは多分に異なる性格を有し、独特の発達を遂げてきた。 日本の鉄道では、階段状の床板に填め込まれた和式両用便器か、もしくは洋式便器を設置するのが普通で、室内片隅には小型の手洗器が設置されている。また特急列車などの優等列車に設置される列車便所は、多くの場合隣接する形で洗面所室が設けられている。 == 初期の歴史 == 鉄道草創期には列車への便所設置はなく、乗客は途中停車駅での休憩時間に慌ただしく用を済ませる必要があったが、鉄道網の延伸で19世紀中期には長距離の鉄道旅行が普通になり、欧米の鉄道では車内に便所を設けることが一般化した。 日本でも1872年の鉄道開業以来、しばらくの間は列車への便所設置はなかった。止むに止まれず窓から放尿したため10円という高額の罰金を取られたという逸話〔路上で放尿した時に課せられた罰金は5銭であった。沢和哉『日本の鉄道ことはじめ』築地書館、1996年、76 - 82頁。またこの記事は明治6年4月15日付東京日日新聞「新聞集成明治編年史 2」35頁 (国立国会図書館デジタルコレクション)〕が、しばしば品のない戯歌とともに伝えられている。 日本で列車の車両内に便所が設置されたのは、1876年に官設鉄道神戸工場で製作された1号御料車(初代)を嚆矢とする。他には1880年に北海道の鉄道向けに貴賓車としてアメリカで製造された「開拓使号客車」の例もあるが、一般旅客向けの客車に便所が設置された最初は、山陽鉄道が1888年に英国から輸入した上等車であり〔白土貞夫「官設鉄道以前に導入された山陽鉄道の列車トイレ」『鉄道ピクトリアル』No.594、1994年8月号〕、官設鉄道では1889年の東海道本線全線開通時である。 同年、政府高官の肥田浜五郎が、東海道線列車が藤枝駅に停車していた際に駅便所に行っていたせいで列車に乗り遅れかけ、これに飛び乗ろうとして線路に転落死したことが鉄道車両への便所設置のきっかけになったとする通説があるが〔政府高官の死とあって関心が高く後追い記事がみられる。「日本人は長途の汽車旅行に慣れず 汽車に便所をつける必要あり」明治22年5月11日付東京日日新聞270頁 、「汽車に便所ボツボツ取付ける」5月26日付時事新報275頁 (国立国会図書館デジタルコレクション)、いずれも「新聞集成明治編年史 7」より〕、実際にはこの事故以前から便所設置は計画されており、イギリスへの便所付客車の発注記録も残っている。東海道本線全線を直通する列車の運行に備えての措置である。1900年に施行された鉄道運輸規程の第32条に三時間少クナクトモ一回五分以上停車セサル列車ニハ各客車ニ便所ノ備エアルコトヲ要スと規程され〔『鉄道運輸規程註釈』 (国立国会図書館デジタルコレクション)〕、長距離を運行する客車はほとんどが便所付で新製されるようになる。 電車への便所設置の最初は、1924年から南海鉄道(現在の南海電気鉄道)が大阪 - 和歌山間に運転した「電7系」(のち1001系)急行電車である。喫茶室(食堂車)付の豪華車で、電車としては食堂・便所とも日本初の設置であった。気動車への便所設置は中国鉄道(現在のJR津山線)のガソリン動車であるキハニ120形・130形が最初で、1932年のことである。 貨物列車の後端に連結される車掌車には長い間便所が設置されず、ようやく便所付の車掌車が登場したのは、旅客車両から遙かに下った太平洋戦争後である。1951年から製造・改造で増備された急行小口貨物列車用のボギー有蓋車ワキ1000形の車掌室付き型ワムフ100形が最初であったが少数例で、その後は1960年代に高速貨物列車用ボギー貨車でユニット構造の車掌室が設置された際に便所付となり、単車の2軸車掌車で便所が付いたのは国鉄最後の新製車掌車形式となったヨ8000形(1974-79年製造)のみであった。 長距離運用のあるアメリカなどではディーゼル機関車の車内に便所を設置した例もあったが、日本で機関車に便所を設けた例はない。長距離列車の場合でも、機関士・運転士は通常2時間程度乗務し、所定の駅で別の要員と交代するため、便意は長距離乗務のある車掌ほど深刻にはならないとされたからである。なお、JR貨物では簡易トイレを持参している運転士もいる〔電車運転中、急に便意を催したら? 切実なウン行事情 - 乗りものニュース〕 通勤形車両については本数が多く、乗車距離が短い大都市への導入がほとんどであるため、便所が設置されることはあまりないが、地方では乗車距離が長い傾向にあるため、設置される場合がある。国鉄・JRにおいては国鉄時代は気動車であるキハ35形とキハ38形0番台では長距離運用を想定したため、製造時から便所が設置され、旧型国電においても地方への転出に際して設置した事例はあるが、新性能電車で便所を設置した事例はない。JR発足後は地方でも通勤形車両が導入されるケースが増加したため、便所付きの通勤形車両が増加している。私鉄では乗車距離が長い料金不要の優等列車にも使用されることがあるため、近畿日本鉄道・東武鉄道・小田急電鉄では通勤形車両であっても便所を設置した事例がある。台湾の台湾鉄路管理局では通勤形車両であっても便所が設置されている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「列車便所」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Passenger train toilet 」があります。 スポンサード リンク
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